
クレジットカードにはさまざまな優待サービスや特典が付いています。海外旅行保険もその1つ。年会費無料のクレジットカードであれば、保険料が実質0円で海外旅行保険に加入できます。
しかし、クレジットカード付帯の海外旅行保険の仕組みをよく理解していないと、万一のときに役に立たないことがあるので要注意です。
ここではクレジットカードの中でも保有者の多い楽天カードを取りあげ、最大限に使いこなす方法を紹介していきます。
楽天カード付帯の海外旅行保険とは?

まず海外旅行保険の概要を簡単に言うと、海外旅行のために自宅を出発した時点から旅行を終えて帰宅するまでを保険期間(最大3か月)とし、その間に発生したケガや病気、事故、盗難などで金銭的な損失が生じた場合に保険金が支払われるものです。
補償内容は保険会社によって多少異なりますが、楽天カード付帯の海外旅行保険では下記の6項目が基本補償となっています。
海外旅行保険の基本補償
補償項目 | 補償内容 |
---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 海外旅行中の偶発的な事故によるケガが原因で死亡したとき、または事故発生から180日以内に後遺障害が生じた場合 |
傷害治療費用 | 海外旅行中の事故によるケガが原因で、医師の診療を受けた場合の治療費 |
疾病治療費用 | ①海外旅行中または旅行期間終了後48時間以内に発病し、医師の診療を受けた場合の治療費 |
②海外旅行中に感染したコレラ、ペスト、天然痘などにより、旅行期間終了後14日(新型コロナウイルスの場合は 30日)を経過するまでに医師の診療を受けた場合の治療費 | |
賠償責任 | 海外旅行中に誤って他人にケガをさせたり、物を壊したりして損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合の賠償金 |
救援者費用 | ①海外旅行中にケガや病気で7日以上の入院をして、家族を呼び寄せた場合の航空券や交通費、宿泊費など |
②海や山で遭難した場合などの捜索・救援費用、死亡した場合の遺体搬送・処理費用にも適用される(救援者3名まで) | |
携行品損害※ | 海外旅行中に携行品(バッグ、衣類、カメラ、携帯電話など)を盗まれたり壊したりした場合。1個につき10万円限度。免責金額(自己負担額)3,000円。 |
※携行品損害では、現金、クレジットカード、メガネ、コンタクトレンズ、義歯などは補償の対象外なので要注意。
海外旅行保険に加入する方法には2通りある

海外旅行保険に加入するには、①損保会社が販売している海外旅行保険に任意加入する方法、②海外旅行保険が付帯しているクレジットカードを保有する方法があります。
楽天カードも海外旅行保険が付帯しているので、楽天カードを持っている会員(名義人)は損保会社へ加入申し込みや保険料の支払いをしなくても海外旅行保険の被保険者になることができます。
なお、クレジットカードならすべてのカードに海外旅行保険が付いているわけではなく、楽天銀行デビットカード(ゴールド以外)やPayPayカード(旧ヤフーカード)、イオンセレクトカード、セゾンカードインターナショナルなどには付帯していません。
また、海外旅行保険が付帯していてもカードのステータスによってサービス内容が異なります。楽天カードをすでに所有している方も以下の点を要チェックです
海外旅行保険が利用付帯と自動付帯の2タイプがある

クレジットカード付帯の海外旅行保険は、旅行費用の一部をそのカードで支払うという条件付きで補償が摘要される「利用付帯」と、クレジットカードを持っていれば無条件で補償が摘要される「自動付帯」の2つのタイプがあります。
楽天カードは、カードの種類によって以下のように分かれます。
利用付帯
年会費無料の楽天カード(一般カード・楽天ピンクカード、楽天銀行カード、楽天ANAマイレージクラブカードを含む)と、年会費2,200円のゴールドカードは利用付帯。
利用付帯は、自宅から空港へ行くまでのバス代や電車代をクレジットカードで決済した場合も補償が摘要されるのが一般的です。
しかし、楽天カードの場合は2022年10月より「募集型企画旅行(パッケージツアー)」の代金を楽天カードで決済した場合に限り有効」ということに改訂されました。
空港までの交通費は適用外となったため、利用付帯に関しては会員の中で「改悪だ」という声も聞かれるようです。
自動付帯
年会費11,000円の楽天プレミアムカードは利用付帯と自動付帯の両方です。
自動付帯だけの場合は、クレジットカードでの決済といった条件もなしで海外旅行保険が適用されます。個人旅行をする場合でも補償が適用されるところが利用付帯との違いです。
自動付帯と利用付帯の両方があるプレミアムカードの場合は、ツアー代金を楽天プレミアムカードで支払うことで、自動付帯の補償分が利用付帯の金額に追加されて最大補償額が高くなります(次の表を参照)。
プレミアムより上のランクにブラックカードがありますが、ブラックカードはインビテーション制(カード会社から招待された人だけが所有できるカード)なのでここでは省略します。
ステータスが高いクレカは補償金額も高い

クレジットカードのステータスによって補償金額が異なります。楽天カードおよび楽天ゴールドカードと、楽天プレミアムカードを比較してみましょう。
楽天カード・楽天ゴールドカードと楽天プレミアムカードの比較
補償内容 | 楽天カードおよび楽天ゴールドカード (利用付帯) |
楽天プレミアムカード (利用付帯と自動付帯) |
---|---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 2,000万円 | 利用:1,000万円 |
自動:4,000万円 | ||
(合計:5,000万円) | ||
傷害治療費用 | 200万円 | 自動:300万円 |
疾病治療費用 | 200万円 | 自動:300万円 |
賠償責任 | 2,000万円 | 自動:3,000万円 |
携行品損害 | 20万円 | 利用:20万円 |
自動:30万円 | ||
(合計:50万円) | ||
救援者費用 | 200万円 | 自動:200万円 |
以上のように、ステータスが違うと傷害死亡・後遺障害の補償に3,000万円もの差がつきます。
そのほか、年会費の高いプレミアムカードには、「プライオリティ・パス(世界1,300か所以上の空港のVIPラウンジを無料で利用できるカード)」を発行してもらえる特典が付いています。
プライオリティ・パスをカード経由ではなく個別に申し込む場合の年会費は約45,000円ですから、楽天プレミアムの年会費を支払ってもすぐに元を取ることができるでしょう。
楽天プレミアムカードには、海外旅行保険だけでなく国内旅行保険も付帯しており、成田空港・関西国際空港・中部国際空港・福岡空港の4か所でもラウンジを無料で利用可能です。
海外・国内どちらも使えるので、旅行や出張の機会が多く、空港での待ち時間は落ち着いたラウンジで過ごしたいという方には楽天プレミアムカードが最適です。
なお、利用付帯の楽天ゴールドカードには、国内の主要空港と韓国の国際空港、ハワイの国際空港のラウンジを年2回まで無料で利用できる特典が付いています。
年会費無料で海外旅行保険の補償を手厚くする方法は?

年会費が有料のカード付帯海外旅行保険は、サービス内容もそれだけ充実しています。しかし、1万円以上もの会費を毎年支払うのは負担が大きいから、会費は無料のカードを持ちたいという方も多いでしょう。
その場合は、クレジットカードを2,3枚持って、メインカードとサブカードと使い分けることをおすすめします。
複数のクレジットカードを持つとポイントがたまりやすいといったメリットがありますが、海外旅行保険に関しては次のようなメリットがあるからです。
- 「傷害死亡・後遺障害」については、複数のカードの中で最も高額の保険金額が支払われる
- それ以外の「傷害治療費」「疾病治療費」「賠償責任」「救援者費用」「携行品損害」については、各カードの保険金額が合算される
- 1枚を海外旅行保険が自動付帯のカードにすれば、そのカードの補償が無条件で適用される
年会費が無料で海外旅行保険が自動付帯のクレジットカードも各種ありますが、その代表格がエポスカード(丸井グループ)」です。
楽天カードとエポスカードの2枚を保有する場合は、利用付帯の楽天カードでツアー代金を決済することで、エポスカードの補償金額と合算され、最高補償金額が高くなります。
楽天カードとエポスカードの2枚持ちする場合の補償金額
補償項目 | クレジットカード | 補償金額 | 補償金額の合計 |
---|---|---|---|
傷害治療費用 | 楽天カード | 200万円 | 400万円 |
エポスカード | 200万円 | ||
疾病治療費用 | 楽天カード | 200万円 | 470万円 |
エポスカード | 270万円 | ||
賠償責任 | 楽天カード | 2,000万円 | 4,000万円 |
エポスカード | 2,000万円 | ||
救援者費用 | 楽天カード | 200万円 | 300万円 |
エポスカード | 100万円 | ||
携行品損害 | 楽天カード | 20万円 | 合計40万円 |
エポスカード | 20万円 |
エポスカードは持っているだけでこれだけ加算されるので、楽天カードのサブカードとして評判のよいカードです。
楽天カードで足りない補償はオーダーメイドプランでカバーする

上の表でもわかるように、クレジットカード付帯の海外旅行保険には疾病死亡補償(病気死亡補償)がついていません。病気死亡については、生命保険に任意加入している場合はそれで補償されるので問題ありませんが、未加入の場合は、特にリスクの多い地域に行く場合などは不安です。
治療費についても、カード付帯の補償だけでは十分とは言えません。海外の医療費は高額で、1回の入院治療で300万円、400万円もかかる実例が多く、1,000万円を超えるケースも珍しくないからです。
病気やケガの心配だけでなく、海外旅行には航空機に関するトラブルも発生しやすいもの。楽しいはずの旅行が台無しにならないよう、そうした予想外の事態に対する備えもしておきたいものです。
それには、損保会社が提供しているオーダーメイドプランを上乗せする方法があります。カード付帯の海外旅行保険に任意の海外旅行保険を上乗せするもので、それぞれの補償金額を合算することができます。
クレジットカード同士の組み合わせの場合は傷害死亡・後遺症は合算できませんが、カードと任意保険の組み合わせはすべて合算できることになっています。
オーダーメイドプランは、渡航先や旅行の日程、人数、それに旅行者の希望に合わせて作られるのが基本で、疾病死亡や治療費を手厚くするもの、弁護士費用を加えたものなどさまざまです。
オーダーメイドプランを上乗せする場合の補償額(例)
ここでは、海外では高額になる「治療費用」を重点的にカバーする損保ジャパンの「海外旅行保険【off!】」のオーダーメイドプランを紹介します。
〈渡航先:アメリカ 日程:5日間 保険料:1人当たり1,260円〉
補償項目 | 楽天カード付帯 | 新・海外旅行保険off! | 補償合計額 |
---|---|---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 2,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
治療費用 | 200万円 | 1,000万円 | 1,200万円 |
疾病死亡 | なし | 1,000万円 | 1,000万円 |
航空機寄託手荷物遅延等費用※ | なし | 10万円 | 10万円 |
※航空機遅延費用とは、預けた手荷物が航空機の遅延で6時間以上到着が遅れ、やむを得ず身の回り品などを購入した場合に、その費用が最大10万円まで補償されるものです。
損保会社の海外旅行保険ではキャッシュレス診療が受けられる

損保会社の海外旅行保険には、海外旅行中の怪我または急病で、保険会社と提携している医療機関を受診した場合に、治療費用が保険会社から医療機関へ直接支払われる「キャッシュレス・メディカルサービス」が付帯しています。
通常は、治療費用を自分で立て替えて支払い、所定の期間内に保険会社に請求し、後日保険金が支払われるという流れになりますが、立て替える必要がないので高額な治療費の心配をすることもなく、また信頼できる医療機関で治療を受けることができます。
楽天カードの海外旅行保険もキャッシュレス・メディカルサービスに対応していたのですが、2019年に改定があり、利用付帯の海外旅行保険はこのサービスには非対応となりました。
楽天カードではキャッシュレスサービスを受けることはできませんが、前述した損保ジャパンの「海外旅行保険【off!】」は対応しているので、加入していればキャッシュレスで治療を受けることが可能です。
楽天カード会員なら家族や友人にも補償が摘要される

利用付帯の海外旅行保険は、ツアー代金をカード決済した本人にしか適用されないのが一般的です。
それに対して楽天カードでは、同じ楽天カードを持つ友人や家族カードを持つ配偶者など数人と同行するとき、ツアー代金をまとめてカード決済すれば、同行者全員に同じ補償が摘用されます。
個別にツアー代金をカード決済することなく利用付帯の条件を満たすことになるので、クループ旅行や家族旅行をするときに便利です。
なお、18歳未満の子どもは家族カードを保有できないので対象外となり、別に海外旅行保険に加入する必要があります。
まとめ
これまで見てきたように、楽天カード付帯の海外旅行保険は、他のクレジットカード付帯の海外旅行保険より補償が充実しています。傷害死亡・後遺障害の保険金は2,000万円で、損保会社の海外旅行保険と比べてもあまり変わりません。
ただ、治療費は200万円です。治療費が比較的安い韓国やタイなどのアジアエリアであれば楽天カード付帯の海外旅行保険で十分といえますが、治療費が高いアメリカやフランスなどに旅行する場合は、他のクレジットカードと併用したり、損保会社のオーダーメイドプランを上乗せする方法をおすすめします。
いずれにしても海外旅行保険は、渡航先や同行するメンバーの顔触れ、健康状態などを十分考慮してプランを選ぶことが大切です。
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